COD(化学的酸素消費量)とは 測定方法と解説

環境分析

水質汚濁の指標として用いられるCODの紹介と日本で主に用いられているCODMnの測定方法について解説します。

CODとは

CODはChemical Oxygen Demandの略で、日本語では化学的酸素要求量又は化学的酸素消費量といいます。

水質を測る代表的な指標の一つで、水中に存在する汚濁(主に有機物)を測る指標として用いられます。

COD値は試料に酸化剤を加え、一定の条件下で試料中の有機物と酸化剤を反応させその時に消費された酸化剤の量から酸素量(O mg/L)に換算して、水中に存在する有機物を分解するのに必要な酸素量を表します。

単位の「O mg/L」は酸素が試料1L当たり有機物を分解するのに何mg必要という意味です。

この酸素量の値が高いほど汚れた水と言うことになります。

日本産業規格であるJIS K 0102 工場排水試験法には、「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」、「アルカリ性過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODOH)」、「二クロム酸カリウムによる酸素消費量(CODCr)」の三種類が規定されています。

日本でCODMnが主に用いられ、単にCODと表記さることが多く、排水基準や海域、湖沼の環境基準に用いられています。


CODとよく似た測定にBOD(生物化学的酸素消費量)があります。

CODMn 100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量

日本国内で主に用いられ、単にCODと表記さることが多い。

工場などの排水に対する排水基準や海域、湖沼の環境基準に用いられています。

酸化剤として過マンガン酸カリウムを用い、試料を硫酸酸性で煮沸し、その時に消費された過マンガン酸カリウムの量から酸素量に換算します。

測定の際には塩素イオンによる測定の防止や反応促進の触媒として硝酸銀又は硫酸銀を添加します。

CODOH アルカリ性過マンガン酸カリウムによる酸素消費量

CODMn同様、酸化剤として過マンガン酸カリウムを用いますが、試料をアルカリ性で煮沸し、その時に消費された過マンガン酸カリウムの量から酸素量に換算します。

CODMnと異なり、塩化物イオンによる妨害がない為、硝酸銀の添加が不要です。そのため、塩化物イオンが多い海水などの測定に用いられることがあります。

CODCr 二クロム酸カリウムによる酸素消費量

欧米など日本国外で主に用いられる方法で、酸化剤として強力な二クロム酸カリウムを使用します。

そのため、測定値はCODMnと比べ高い値となります。

この方法では、ほとんどの有機物を酸化分解することが出来ますが、有害な重金属である六価クロムを含むニクロム酸カリウムを使用するため、日本ではCODMnが用いられています。

JIS K 0102に規定されているのは、海外との整合性をとるためです。

CODMnの測定

測定方法

1)試料を採取する

  • 懸濁物を含む場合はよく混ぜて出来るだけ均一化してから採取します。
  • 試料は試料中に存在する微生物などの影響でCOD値が時間経過とともに変化するため、採取ご直ちに測定する必要があります。
  • 直ちに測定できない場合は、0~10℃の暗所で保存します。

2)試料を適量、三角フラスコに分取し、純水で全量を100mLとする

  • 懸濁物を含む場合はよく振り混ぜて均一化してから分取します。
  • 試料は 9) での滴定値が4.5~6.5mLとなる量を分取する。
  • COD値がある程度予測できる場合は、試料の分取量の算出式から適量を求めることが出来ます。
  • COD値がO 11 mg/L以下の場合、試料量は100mLとなります。

3)硫酸(1+2)を加える

  • pH調整剤として添加します。

4)硝酸銀(200g/L)を加える

  • 触媒としてさせるため、通常5mL添加します。
  • 塩化物イオンが含まれている場合には、塩化物イオン相当量+5mL添加します。
  • 硝酸銀の添加量が10mLを超える場合には、500g/L溶液を用いるか、硝酸銀の粉末を添加します。
  • 硝酸銀の過剰添加はCOD値を上昇させ、過少添加はCOD値を低下させることがあるので、適量を添加する必要がります。

5)5mmol/L過マンガン酸カリウムを10mL加える

  • 酸化剤である過マンガン酸カリウムの量でCOD値が変化するので、正確に10mL加えます。
  • 試料が過マンガン酸カリウムの色になります。

6)水浴で30分間煮沸する

  • COD値が変化するため、加熱時間は厳密にする必要があります。
  • 加熱時は試料の液面が常に沸騰水浴の液面下になるようにします。

7)水浴から取り出す

  • 試料に過マンガン酸カリウムの色が強く残っている場合は、COD値が低いことを示し、分取量が少ない(希釈のしすぎ)可能性がある。
  • 反対に過マンガン酸カリウムの色が薄い場合は、COD値が高いことを示し、分取量が多い(希釈不足)可能性がある。

8)12.5mmol/Lしゅう酸ナトリウム10mLを加え、よく反応させる

  • 還元剤であるしゅう酸ナトリウムの量でCOD値が変化するので、正確に10mL加えます。
  • 加熱後に残った過マンガン酸カリウムをしゅう酸ナトリウムで分解します。
  • 過マンガン酸カリウムの色が消えない場合は数分間置く、必要があれば再度加熱を行い、完全に色を消します。

9)5mmol/L過マンガン酸カリウムを用いて、僅かに赤色を呈するまで滴定する

  • 過マンガン酸カリウムを滴下し、8) で消費されなかったしゅう酸ナトリウムの量を求めます。
  • 呈する赤色の濃さはブランク(空試験)と揃えます。
  • 滴定値が4.5~6.5mLから外れた場合は、測定結果を参考に再測定を行います。

※ブランク(空試験)

  • ブランクは 2) の試料を純水に換え、2) ~ 9) の手順で測定します。
  • このブランクの測定は水や試薬、測定条件(測定環境)による誤差を補正するために行います。

COD値の算出

試料の分取量の算出

5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液の反応予想量(mL)が4.5(又は3.5~5.5)となっているのは、ブランクの滴定値が1.0mLと仮定し、加熱後の滴定値4.5~6.5mLから差し引いているためです。

また、CODは測定の原理上、測定時の試料濃度が低下する程、過マンガン酸カリウムによる試料の酸化率が上昇し、COD値が上昇します。

そのため、再測定をする際は、測定値が高値で外れた場合はEに高めの値を代入し、低値で外れた場合はEに低めの値を代入します。

化学反応式

1)試料の酸化反応

MnO₄⁻+8H⁺+5e→Mn²⁺+4H₂O
3Mn²⁺+2MnO₄⁻+2H₂O→5MnO₂+4H⁺

2)しゅう酸ナトリウムを加えた時の反応

2MnO₄⁻+5C₂O₄²⁻+16H⁺→2Mn²⁺+10CO₂+8H₂O
MnO₂+C₂O₄²⁻+4H⁺→Mn²⁺+2CO₂+2H₂O

3)過マンガン酸カリウムでの滴定

5C₂O₄²⁻+2MnO₄⁻+16H⁺→2Mn²⁺+10CO₂+8H₂O

CODMn測定での注意点

過マンガン酸カリウムで酸化分解できるものは有機・無機問わず測定の対象となるが、酸化分解できない物は有機物で合っても対象外となります。

そのため、明らかに有機物が多量に含まれている試料であっても、過マンガン酸カリウムで酸化分解できないがために、COD値が低くなることがあります。

また、反対に金属成分など無機物が多量に含まれている試料のCOD値が高くなることもあります。

まとめ

  • CODは水中に存在する有機物による汚濁を測る指標であり、日本国内では主にCODMnが用いられている。
  • 硝酸銀の添加量によって測定値が変動することがある。
  • 過マンガン酸カリウムやしゅう酸ナトリウムの添加量、加熱時間は厳密に行う必要がある。
  • CODは測定時の試料濃度が低下する程、過マンガン酸カリウムによる試料の酸化率が上昇し、COD値が上昇する。
  • 過マンガン酸カリウムで酸化分解できるものは有機・無機問わず測定の対象となるが、酸化分解できない物は有機物で合っても対象外となる。

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